美優は考えた。奈々がアキナの横を指定した後、私が奈々の横を指定して、亜夢を端っこにすれば、私が寝顔を独占出来る。たとえ奈々が、『約束が違うじゃない』と言い出したとして、アキナも亜夢もこの裏取引を知らないのだから、私も知らないフリすれば……
 奈々は美優の口元に浮かんだ笑みから何かを感じ取ったようだった。
「あのさ。私がアキナの横をとったら、その横に来ようとか思わないでよね? 美優がハツエちゃんを抱っこしなかったら私はアキナと一つ開けた位置を指定するから」
「う~ん」
 美優は考えていたことを見透かされたと思った。奈々が言う通りのことをしてくれるのなら、ハツエの面倒をみても問題はないか。美優は右手を上げて言った。
「分かったわ。いう通りにしましょう」
 上げた手をパチンと合わせ、二人は部屋に戻った。
 部屋の中の様子に気付いて、奈々は声をだした。
「えっ……」
「そんな……」
 と美優も唖然としていた。
 奈々はあきらめたように言う。
「まあ、いいんじゃない。場所的には計画通りでしょ?」
 奈々と美優が場所を指定するのを待たずに、亜夢とハツエは、アキナの隣の隣で、一緒に寝ていたのだった。
 亜夢はハツエを抱きかかえたまま倒れたような恰好で、ハツエは、ハツエで亜夢に手足をのせ、大の字で寝ていた。
 奈々と美優に気付かないほど、ぐっすりと寝ている。
「疲れてたのね」
 窓際をみるとアキナも寝ていた。
「風邪ひくよ。亜夢」
 美優は二人に布団をかけた。
「写真とっとこ」
「私も」
 二人は亜夢の寝顔を撮って、部屋の電気を消した。
「おやすみ、美優」
「おやすみ、奈々」
 美優は窓際に、奈々はアキナの横で。
 全員が寝てしまった。



 翌朝、朝食の後、ハツエが四人に話し始めた。
「きょうはみんな、神社にいきますよ」
 誰も反応がないか、と思っていると、奈々が口を開いた。
「どこにあるんですか?」
「なんのために」
「それじゃ今日わたし勉強しなくていいんだ! やったぁ」
「そんなことより美優に|精神制御(マインドコントロール)の対抗方法を教えてください」
 ハツエは耳を押さえて、四人を睨みつけた。
「うるさい!」
 ハツエはそう言った後、|思念波(テレパシー)を使い始めた。
『この体でしゃべると面倒くさいから、亜夢とアキナに言うよ。神社は海岸沿いの小さい岬にある。そこで全員に非科学的潜在力とは何かを説明して、見せる。美優と奈々は昨日の訓練で少し、|超能力(ちから)を使うことが出来るようになっているはずじゃ』
「えっ?」
 亜夢は不思議そうに言うと、アキナが言った。
「昨日、美優と奈々は何やってたの?」
 その質問で亜夢は昨日、ヤドカリを通じてみた光景を思い出して絶句した。
「昨日は砂浜で遊んでただけだよ」
「うん。砂浜にヤドカリとかいたんだよ」
 奈々が思い出したように手のひらを叩いた。
「あ、そういえば、海辺に神社みたいのがあった。あそこに行くの?」