「そうだよ。そこでちょうのうりょくをおしえるの」
「い、いきなり出来るのかな」
 美優が戸惑ったような声で言うと、ハツエが答える。
「できますよ。その為に昨日はみんな訓練したんだから」
「亜夢は訓練したかもしれないけど、私は勉強してたし、二人は砂浜で遊んでたんだよ?」
「いいから、いいから」
 ハツエはそう言うと、テレパシーで付け加えた。
『午後は浜で泳ぐから、全員水着着用じゃ』
 アキナが軽く飛び上がって、ハツエの横に立ち、三人を振り返った。
「全員水着来ていくんだって。午後は泳ぐから」
 奈々が何か気づいたように言った。
「ご飯はどうするの?」
 全員が顔を見合わせた。
 するとハツエが台所から大きな皿を持ってきた。
「ハツエがおにぎり握ったのよ。ひとりひとり、ラップでくるんで持っていくよ」
 ハツエの小さな手で握った小さいおにぎりがたくさん皿に乗っている。
 各々が食べたい分だけラップにくるんで取り分けた。
「じゃあ、きがえたらしゅっぱつ!」
 ハツエが拳を突き上げると、全員が『オー』と言って拳を上げた。

 砂浜まで降りると、ハツエは暗い顔をしてうつむいていた。
 亜夢が近づくと、ハツエが言った。
「かたぐるまして」
 亜夢が腰を下ろして、肩に乗せるとハツエは急に元気になって岬を指さした。
「あそこがじんじゃよ」
「おお……」
 と、アキナだけが反応した。
 岬に松の木が何本か生えている中、鳥居と小さな社が見えた。
 奈々が言う。
「あそこで何がわかるのかしらね」
「……」
 奈々の顔を見ただけで亜夢は何も答えることが出来なかった。
 五人は砂浜を歩きつづけ、岬までたどり着いた。
 太陽を遮るものがなかった砂浜に比べると、松の木陰は涼しくて心地よかった。
 鳥居をくぐり、一行は神社に入った。
 緊張した面持ちで奈々が言った。
「アキナ、何も、ないよね?」
「普通の、神社、だな。美優は何か感じるか?」
「なにも…… 亜夢、亜夢はどう?」
「いててて」
『?』
 三人が亜夢を見ると、ハツエが亜夢の髪の毛を馬の手綱のようにぐいぐいと引っ張っていた。
 亜夢が肩車されているハツエのわきに手を入れ持ち上げ、下におろした。
「ハツエちゃん、ここ、ただの神社だよ。非科学的潜在力なんかちっとも感じないよ?」
「あむちゃん、それはちがうよ」
 ハツエは人差し指で空をさした。
『ここを見ておれ』
 アキナが二人に伝える。
「空を見ろって」
 四人はハツエが指さす空間を見上げた。
 そして、くるり、と指を回すと、その延長線上の空間が抜け落ちたように真っ黒になった。
 真っ青な空に、厚みのない黒い円盤が現れた、というべきか。
「みんな、お星さま、見える?」 
 ハツエが言うと、みんな恐る恐るその黒い闇の方を見た。
 黒い円には、うっすらと光る星が見えていた。
「みえます」