「そんな食事で足りるんですか?」
「ああ。今日は少し量を抑えなければならないからね。君の方こそ、しっかり食事は出来ましたか」
「はい。地鶏親子のオムライスが食べたかったんですが、売り切れだったみたいで」
 松岡が少し頭を下げたように見えた。
「それは残念でしたね」
「冴島さんは何を食べたんですか?」
「影山さんには申し訳ありませんが、その『地鶏親子のオムライス』ですよ。先に連絡をして取っていおいてもらったんです」
 俺は膝に手をついた。
「……もうしわけない」
 松岡さんが深く頭を下げた。
 俺は手を振って言った。
「いえ、別に松岡さんが悪いわけでも、冴島さんが悪いわけでもないですから」
「……」
 松岡さんが運転席、俺が助手席に座ると、車は走り出した。
 何度も何度もトンネルを抜け、アップダウンを繰り返しインターチェンジを抜けた。下道は下道で、行ったり来たりするように急なカーブを曲がってくだっていき、同じようにカーブを曲がって上がっていく。
 下道を走っているうち、辺りは夜になっていた。
 道の両サイドが膨らんでいて、チェーン着脱場と書いてあるとこおrに車が止まる。
「?」
「さあ、着きました」
 俺はちらっとルームミラーで後ろを見た。
 口元ではなく、冴島さんの頭頂部が見えた。頭を下げているのだ。
「影山さん。降りて手伝ってください」
「は、はい」
 俺は車を降りると、松岡さんが車の後ろで手招きした。
「はい、なんですか?」
 トランクを開け、荷物を下ろすようだった。俺はかなりの重量のバッグを下ろすと、軽く汗をかいていた。
「これなんですか?」
「君のしばらくの宿になるものだ。組み立て方は中に紙が入っている」
 変に長いバッグだと思った。これは組み立て式のテントなのだ。
「こっちと、こっちのバッグは?」
「こっちが飲水と食べ物。そっちはその他キャンプ道具だ」
「お、俺ここでサヨナラですか?」
 松岡さんは柔らかく笑みをたたえ、静かにトランクを閉めた。
「問題のトンネルはこの先」
 指で示す方向を見ると、明かりもない山の中腹だった。
「えっ、まだかなり距離が……」
「申し訳ない。本来ならトンネルの近くまで行って下ろしたいところなんですが、お嬢様は他の予定があって」
「さっきリニアの建築現場を見るって」
「その前にあるところへ寄る必要が……」
「あとちょっとじゃん、お願いしますよ。この荷物を持って『あそこ』って指で示されたところに行けませんよ」
 松岡さんは会釈をして車に乗り込む。俺は運転席に回り込む。
 少しだけ窓が開いた。
「発車します。危ないですよ」
 少し開いた窓から、後ろからの声も聞こえてきた。
「頼んだわよ。三日以内で解決するって答えちゃったのよ。食料も水も三日分しかないし。なんとかそれまでに調べてね。よろしく」