「もしかしたら、キャンセラーである必要はないのかも、ってことさ。干渉波を止めれれば、その空間は非科学的潜在力を使える人の|聖域(サンクチュアリ)になる」
 中谷は立ったままノートパソコンを開けて何か調べてみようとする。
「ちっ、圏外じゃなにも……」
 ドームの入り口から、数人の男が急ぎ足で出てくる。
 男たちはみなバラバラでカジュアルな服装だった。しかし、あからさまに組織だって行動している。
「えっ?」
 亜夢が言った時には、四人は男たちに囲まれていた。
 たとえようのない無言のプレッシャーがかかかっている。
 一人が口を開く。
「君たちがヒカジョの子だね?」
 亜夢とアキナは中谷の方を見る。
 中谷の身体がブルっと震えた。
「じゃあ、中谷くんに聞こう。この|娘(こ)たちを借りるぞ」
「……この|娘(こ)達はものじゃありません」
 すると男たち前がんが、深々と礼をした。
「君たちの協力が必要だ」
 中谷がうなずいた。
 亜夢とアキナはそれを見て返事をした。
「はい」
 男たちが出てきた入り口へ戻っていく。
 亜夢とアキナがそれについて行く。清川と中谷が続いて入ろうとすると、しんがりの男が立ち止まって手を広げる。
「中谷さん、清川さんはここでお待ちください」
「えっ……」
「命令を守らないと……」
 しんがりの男は手のひらを水平にして首に当てた。
「……」

 亜夢とアキナは男たちが軽快に階段を上がっていくのに、必死になってついていっていた。
 階段を上がりきって、小さい扉を潜って入った部屋は、どうやら狭いパイプスペースでコンクリート打ちっぱなしで様々な配管がそのままだった。その部屋の中には、配電盤やら機械類が並んでいた。
 最初から部屋にいた、リーダーらしき男が近づいてきて、亜夢とアキナの前で立ち止まった。
「君たちが非科学的潜在力を使う子か」
 二人は同時にうなずく。
「この戦いは負けられない。大勢の命がかかっている。敵は銃を持っていて、加えて電撃、身体の硬化など、君たちと同様に非科学的潜在力を使う。その力は君たちにとっては当然で、我々が銃を持ってそれに対抗するのは酷いと思うかもしれんが、奴らは非道でこのスタジアムの人間を人質に取っているような人間だ。我々が行うことに協力をしてもらうために呼んでいる。もしそれができないようなら、悪いが君たちも同罪として、銃を向けることになる」
「……なぜ、いきなり私達に銃を向ける話をするのですか?」
「同じ非科学的潜在力を使うものとしての共感を捨ててくれ、ということだ。そして、テロリストとして犯人を殺してしまうかもしれないが、それについて理解してもらう必要があるからだ」
「……殺すかもしれない、というのには」
「参加できないというのか」
「はい」
 亜夢は男を睨みつけるようにしてそう言った。
 アキナも慌ててうなずいた。
「分かった。水沢。この子達をもとの場所に連れて行け」
 呼ばれた水沢という男が、亜夢とアキナに銃を突きつけた。
「悪いが、作戦に賛同いただけないなら、さっきいた地下駐車場に戻ってもらう」
 亜夢とアキナは手を上げて後ろを向いた。
「扉を出ろ。さっきの廊下の先の階段から戻るぞ」
 男がしんがりをつとめ、亜夢が先頭になって階段を下りていく。
「亜夢。本当にこれでいいのかな?」
「テロリストだって人だよ。人殺しに加担できないよ。だいたい私達は連れ去られた美優を探しに来たんだし」