また叩く。
「すみません」
「何度も謝らなくていいの。言われたことを直しなさい…… あれ?」
 スーツの三人が俺の声に気付いて、一斉にこっちをみた。
「すみません。サーバールームを見てきたんですが、あのゾンビが出まして」
「はぁ? 何寝ぼけたこといってんの?」
「本当です。動く死体。生ける屍、リビングデッドってやつです」
「あなたが新人ね。まったくサーバールームで寝ぼけたことしないで」
 俺は監視カメラの映像を映しているモニター前に行き、リモコンを操作した。
「……」
「早く見せなさいよ」
 俺は再生方法を教わっていなかった。
「先輩どうするんでしたっけ?」
「……やめろ影山。言い訳なんか。俺が怒られれば済むことなんだよ」
「映っているはずなんですよ。俺、スマフォで照らしたんだから。再生方法を教えてください」
 先輩は俺を両手で押して、カメラの前から離れさせた。
 俺が持っていたリモコンを取り上げ、言った。
「休憩室で休憩してこい」
 物凄い形相だった。
「篠原さん、すみませんでした」
 先輩はスーツの女性にそう言った。
「香川くんはカメラ映像を確認しなくていいのね?」
「はい」
 先輩は手で俺を追い払うようなしぐさをした。
 俺は黙って監視室を出た。
「あれ?」
 監視室を出て、休憩室に向かうところで手首の違和感にきづいた。どうやらGLPが何か反応していたようだった。
「そういや、これって」
 GLPが反応するのはこれが初めてではない。工事現場の警備のバイトの時も、トンネルの時も、何かGLPが察知しているような気がする。もしかすると、あの中に霊を導いた人間が、いや内在させている人間がいるのかもしれない。
 俺は休憩室に入り、ソファーに体を預けた。
「誰だろう……」
 鬼気迫っているとすれば、あの篠原さんとかいうスーツの女性だ。あんなヒステリックに怒っているのは尋常じゃない。それを他の二人も止めるわけじゃない。女性の霊の力で、二人の男は押さえつけられているのかもしれない。
 そんなことを考えている時、休憩室の扉が開いて男の人が入ってきた。
「!」
 俺は、扉の先の廊下に清掃作業員を見つけた。
「あの時の!」
 慌ててソファーから立ち上がり、扉を再び開けて清掃員が行ったであろう方向を追った。
 建築現場でも、トンネルの時も現れた。間違うわけがない。
 通路の突き当りに来て、左右を見回すが動く者は見当たらない。
 見失ったか。俺は一か八か、右の方向へ進んだ。
 その廊下は、どこに通じている訳でもなく、行き止まりになっていた。
 何もないわけではなく、パイプスペースに通じる小さい金属の扉があった。
「?」
 懸命に壁を見回したが、不審な部分はなく俺は休憩室に引き返した。