「なんだ、ばれちゃった」
 ニヤリと笑って亜夢の方を見た。
「あなたにも協力者がいるんじゃない」
 三崎は、通路の扉開け、閉める間際に言った。
「じゃあね」
「待てっ」
 亜夢は廊下を走り、その扉のノブを両手でグイッとひねった。
『!』
 開けた先は床が抜けていた。床が抜けているどころではない。上も下も正面も、夜空のように星が見えるだけだった。
『宇宙空間?』
 床があるであろう距離まで足を下げていくが、床にぶつからない。
『これ、マジだ……』
 亜夢はそう言って元の通路に戻ろうとすると、後ろにいる黒い人影に気付く。
『あっ』
 押し出され、亜夢は扉の外の闇の空間を進んでいく。身体をひねりながら、後ろを向くが、扉はどんどん遠くなってく。
『そうだ、息が出来るんだから』
 息ができる、ということはこの無重力に思える空間にも空気があるのだ。亜夢は自らの|非科学的潜在力(ちから)を使って、空気を動かし、自分の身体を扉の方へ進めようとする。
『だめだ、ピクリとも動かない』
 宇宙空間ではジェット機は進むことが出来ない。ロケットエンジンの理屈が必要なのだ。
『気付くのが遅いよ』
 正面に、三崎が現れた。ロケットパックを背負い、ミサイルランチャーを持っている。
『さよなら……』
 次々に発射されるミサイル。亜夢は空間を動くこともできずにミサイルの着弾を待つしかない。
 違う! これは違う!
「ふぅ……」
 亜夢は大きく息を吐いた。
 見えている世界は、急に扉の内側の世界、つまり亜夢がさっきまでいた廊下に戻った。
「もう少し気づくのが遅かったら、ミサイルで粉々にされてた」
 亜夢は目の前にある扉のノブを見つめた。
 三崎はこのノブを反対側から触って待っていたに違いない。私が触れると同時に思念波世界を展開して、引きずり込んだ。さっきの力くらべの時からやり方が変わっていない。
 亜夢は上着を脱いでそれをドアノブに巻き付けた。上着の上から強くノブを握って回すと、扉を蹴った。
「?」
 そこは車両が通れるくらいの広い空間になっていた。
 三崎の姿は見えない。
 亜夢は扉に触れないようにその広い空間に出た。右も左もシャッターで閉鎖されている。天井は高く、二階ぐらいの高さに手すりがついていて、そこをあるけるようになっている。その二階の手すりのついた通路へ上るために、垂直に鉄製の梯子が伸びていた。
 エリアを見回して、この中に三崎がいるとすれば、ここから死角になっている二階の通路にいるように思えた。
「……」
 亜夢が思念波世界を覗き見れば、その瞬間に三崎がその世界を支配してくるだろう。三崎を|思念波(テレパシー)で察知しようとするのは危険だ。物理的に視覚で確認するしかない。
 垂直に伸びている梯子のそばに近づくと、亜夢は躊躇した。
 もし自分が三崎だったら…… これを罠に使うだろう。
 梯子の真下にきたら、上に隠れている三崎がこの梯子の上を掴む。
 怪しんで梯子から離れたら、下から見えない死角に移動すればいい。
 この梯子の金属を掴んだ瞬間に思念波世界に引き込めばいいのだ。
 だったら…… 亜夢は真上を睨みつけるように見つめた。
 両足を足を曲げて、勢いよくジャンプする。
 電車からみたレールのように、目の前を梯子が流れていく。