「あっ、そうそう。私も影山くんに聞きたいことがあったわ。あの時、何故、私『妹』だったの?」
 俺は二人からの視線を外してディスプレイの方を見た。
「……」
「玲香、それ何のこと?」
 中島さんが、昨日冴島さんが来るまでのことを淡々と説明した。
「ふぅ~ん」
「……」
「冴島さん、なんか分かったんですか?」
「別に。たぶん、あんたの欲望よ。欲望。そういうのが一番強く表れるものだだから」
「え~ つまりは|妹萌え(シスコン)なんだ? そう言えば動画のタイトルにも『妹』が何個かあったような」
 俺は口の前に指を立てる。
 冴島さんが聞き返す。
「動画って?」
「ハハハ。なんでもないですよ」
「なにそれ。乾いてて、気持ち悪い笑い声ね。まあいいけど」
 そんなことを話していると、コーヒーのいい香りがしてきた。
 冴島さんはコーヒーカップを一つ用意し、椅子に座ると注いでそのまま一人で飲み始めた。
 俺は呆然と冴島さんの顔を見つめた。
「ん? もしかしてコーヒー欲しいの? なら自分でカップ持ってきて注いで飲んだら?」
 冴島さんが取り出したところからカップを取ろうとすると、中島さんが言う。
「階段の途中に納戸があるから、そこに影山くんの荷物あるわよ」
「あっ…… そっち使えってことですか?」
 冴島さんが口の前にカップを抱えながら言う。
「まあ、なるべくならね」
「はい」
 俺は階段を上がる為玄関の方へ戻った。
 すると、戸口の周りが妙に明るい。いや、明るいというだけでなく、照らしている光が妙に動いている。車のヘッドライトのように左右や上下とかの一定の方向ではないのだ。フラフラと、生き物のようだった。
 灯りが、フッと近づいてきた時、戸口の周りのすりガラスに映った。
「ひ、人魂」
 火の玉が浮かんでいるのだ。そうだ、コッチ側はさっきの墓地。
「冴島さんっ!」
「ど〜した〜?」
 声だけが聞こえる。本人はやってこない。
「ひとだま、ひとだまがでましたっ!」
「ああ、気にしないでいいよ。家は燃えないし、結界があるから入っては来ないから」
 フラフラと動く火の玉を見つめながら、俺は言う。
「け、けどかなり近くまで」
「だから大丈夫だって。ここはいつもそうだから早くなれないと暮らせないよ」
「……」
 俺は額にかいた汗を拭いながら階段の方へ向き直り、一度目を閉じた。
 階段側を|人魂(ひとだま)が照らしている。 
 パチン、と部屋の灯りを付けて階段を登った。
 階段を登ると、中二階のあたりに納戸があった。扉を開くとダンボールの箱が沢山詰まっていた。
 納戸は天井が一メートルない高さで、そのままは入れなかった。
 マジックペンで書かれた簡単な内容を読んで、コップが入っているであろうダンボール箱を探しだす。開いてゴソゴソやると、いつも使っていたマグカップが見つかった。
「……」
 それを持ってキッチンに戻った。
 俺は冴島さんの向かいに座って、コーヒーを注いだ。