俺は探した。
「冴島さん!」
 俺は叫ぶと、囲んでいた炎が、一瞬にして消えた。
「冴島さん……」
 俺の目の前に、冴島さんの顔があった。
「……」
 冴島さんの顔は、俺の視界の水平方向から出てきている。
「よかった。気がついたわね」
 橋口さんの顔が、逆から出てきて、ようやく俺は自分の状況が分かった。
 俺は倒れているのだ。上体を冴島さんに抱えられてるのだ、上から覗き込まれているのだ、と。
「さっきの炎は……」
「炎?」
 橋口さんが、あごに指を当てて言う。
「おそらくだけど、幻覚よ。あなたにとっては本物だけど?」
「……火狼は?」
「ちんちくりんのせいで取り逃がしたわ」
「誰がちんちくりんよ。貧乳のあんたがドジ踏んだせいで、屋敷の方へ入られてしまったんだケド」
 冴島さんと橋口さんのやりとりに笑うところなのかもしれないが、顔が引きつって反応出来ない。
「とにかく、影山くんは一度車の中に」
「だめよ、この子は連れていかないと」
「……」
 冴島さんの表情が曇る。
 何か理由があるのだろうか。
 二人は俺の顔を確認するようにみつめる。
 俺はうなずいた。
「動ける?」
 俺はあらためて自分の手足が動くかを確認する。
「はい」
 冴島さんと橋口さんに手を貸してもらいながら立ち上がる。
 自分の人生の中では経験したことのない、立ちくらみを感じた。
「えっ……」
「影山くん」
 冴島さんがよろける俺の腕をとっさに掴む。
 心配そうな表情で俺をみつめる。
「やっぱり、車に……」
 橋口さんが冴島さんに近づいてくる。
「さっき話したでしょ。屋敷に入るにはこの子の力がいるって」
「大丈夫です」
 何で必要とされているのかわからない。だから、自信なんかなかったが、必要とされているなら、それをやるしかない。ただそれだけだ。
 それに屋敷の周囲で事件が多発していると聞いてから、俺はここに戻らなければならないような気がしていた。
 運命というものに違いない。
「全力であなたを守るから」
 冴島さんは屋敷の方を向いたまま、そう言った。
 俺たちは屋敷の大きな門の前に進んだ。
「この前入ったのは?」
「こっちの通用口です」
 俺は横にある小さな扉をさした。
 近寄ってみると、逃げ出る時に中島さんが扉にした紐がほどけている。
「開いている」