「この感覚、なんなんですか?」
「黙って、竜頭を押せるように準備して」
 冴島さんの言うことは絶対だった。俺は黙って霊弾が襲ってくるのを見つめた。
『せぇーの! 発射!』
 声に合わせ、俺はGLPの竜頭を押し込んだ。
 今までに見たことのない大きさの『助逃壁』が光りながら発射される。
 まるごと霊体の霊弾は光る壁に押し戻されながら屋敷の方へ進んでいく。
「GLPに私とカンナの霊力を注ぎ込んで足し算したのよ。ほら、ぼーっとしてないで『助逃壁』の後ろについて行って屋敷の方へ向かうわよ」
「あの霊体は成仏するんでしょうか?」
「成仏出来ても出来なくても、あの光の壁からはしばらく出れないわね」
 橋口さんがじっと俺の方を見ている。
 屋敷に向かって進んでいく間も、俺をじっとみているので、たまらなくなってたずねた。
「橋口さん、どうかしたんですか?」
「えっ? 何が?」
「俺のこと見てますよね?」
 ようやく何を聞かれているか意識したように、視線をそらした。
「あたしみてないケド」
「……」
「なによ。麗子の使用人なんかに興味はないの。そっちこそジロジロみないでよ」
 冴島さんが割って入ってきた。
「なんとなく、だけど、さっきの『助逃壁』を作り出した時、こちらからエネルギーを押し出したんじゃなくて、引き出されたような感じがあるの。カンナはそれを気にしているんじゃないかと思う」
「えっ、俺が?」
 橋口さんが冴島さんの腕に触れる。二人は俺から距離とった。
 そして耳打ちする。
「(いったい、こいつには何が憑いているんだ?)」
 冴島さんは首を振る。
「(|素性(すじょう)はしらべている最中よ)」
「……」
 俺たちは再び屋敷の前に、さっきよりもずっと近くまでやってきた。
 車回しのあたりに、人影が動いた。
 黒いスーツ。サングラスに、タバコ。赤い炎が燃えているが、タバコの炎は進まない。
「火狼(ほろう)、もう逃げられないわよ」
「ふん、別に俺は逃げ込んだわけじゃない」
「おとなしく捕まりなさい。あくまで抵抗するなら倒すまでよ。除霊士を舐めないで欲しいんだケド」
 黒いスーツの男が、すっと指をこっちに向けると、何もない空間から霊弾が作られ、こっちに向かって飛んでくる。
 橋口さんが、左手を押し出すように伸ばすと、そこに棒状の空気の歪みができた。
 その歪みが伸びていって、フラフラと回避運動をする霊弾を捉える。
「単発の霊弾では倒せないか」
「火狼、あなた何か知っているわね?」
 火狼と呼ばれる男は、ボールを投げるように右手、左手を動かす。
 すると、まるで手のひらから放たれたように霊弾が動き出す。
 冴島さんもエア卓球のように手を左右に動かすと、冴島さんの前方にも霊弾が作り出される。
 橋口さんがスマフォを眺めてから言う。
「むっ、ここは霊圧が高くなっている」
 冴島さんにつづいて、橋口さんも腕を振ると、指先から前方に霊弾が繰り出される。
 火狼は撃たれる霊弾を避けながら、腕を振って俺たちの方へ霊弾を放つ。
 さっきまで避ける一方だったのに、今は違った。冴島さんは霊弾に霊弾をぶつけて打ち消したり、小さいものは手で握りつぶすようにして霊弾を消してしまう。一方、橋口さんは、着ていたコートの裾を引っ張って振り回し、コートに霊弾をぶつけて消している。