そんな様子を横目でみながら、俺はどうすることもできずに、あたふたと避けている。
 霊弾は地面に当たって消えてお終いなものもあれば、弾んで追いかけてくるものもある。
 腕についているGLPをのぞき込むが、『助逃壁』は表示がグレーで、まだ使えない。
「あのっ、俺はどうすれば!」
 冴島さんがちらっと振り返ると言う。
「あなたも霊力を集中すれば打ち消せるわ」
 俺は両手を伸ばし、霊弾を受け止めるつもりで精神を集中する。
 俺だって、霊力はあるんだ。集中、集中……
「うげっ!」
 広げた手のひらをよけて、霊弾が俺の腹の真ん中にぶち当たった。
 吹き飛ばされて、地面を転がり続けた。
 あちこちが擦り切れて血が出ている。
「……だめです」
「データセンターの時を思い出して!」
 そう、あの時俺はサーバーラックから出てくるゾンビを倒していた。
 アレが『霊力の集中』のヒントなのかもしれない。
 俺はGLPの竜頭をチリチリと回し、『鉄龍』に合わせた。
「出てこい鉄龍!」
 目の前に輝く杖が浮かび、その輝きが消えると、そこから金属でできた杖が落ちてきた。
 慌てて掴むと、俺はそれをバットのように構えて飛び込んでくる霊弾を打った。
「やった!」
 鉄の杖に弾かれた霊弾は、粉々の光の粒になって散り、そして消えていった。
 これなら、と思って俺はこっちに向かってくる霊弾に杖を振り続けた。
 火狼は橋口・冴島コンビが投げつける霊弾を避けたり処理したりしていたが、突然、手をついてしまった。
「ん?」
 俺は、スーツの男が両手をついて俯いているのを見て、違和感と不自然さを感じた。
 しかし、すぐにそれが間違えであることに気づいた。
 火狼は遠吠えをしたのだ。
「これが本来の火狼の姿ってことか」
 火狼の周囲の空気が陽炎のように揺れたかと思うと、着ていた服が燃え始めた。
 服が焼け落ちると、全身に毛が生え、身体全体が大きくなっていった。
「もう戻る気はなさそうね」
 そう言う冴島さんに俺はたずねる。
「どういうことですか?」
「火狼が狼の本体をさらけ出したら、誰かが封印するまで人の姿には戻れない」
「イコールヤバいってことよ」
 そう言って橋口さんが、闘牛士のようにトレンチコートを広げて持って火狼と俺たちの間に入った。
 完全に狼化した火狼。その怒り狂ったような咆哮が聞こえる。
 火狼が橋口さんのコートに突っ込んでくる。
 コートは火狼の頭に絡みついた。
 ダメージがなかったように見えた橋口さんが、よろける。
「大丈夫ですか」
 橋口さんの紫のセーターは胸元が開いていて、大きな胸の谷間が見えた。
 いや、なんで俺はそんなところを見ているんだ。
 コートを持っていた方の腕に軽く擦り傷がある。橋口さんは苦痛のせいか、まぶたを閉じる。
「橋口さん! 大丈夫ですか、気を確かに……」
 俺の腕のなかで身体をそらせると、さらに胸が強調される。
 触りたい、確かめたい、という気持ちが膨らんでいく。
「影山くん、何してんの? 火狼がっ」
 火狼は、顔を覆っていたコートを何とか燃やし尽くし、ぶるっと身体をねじった。