霊弾が輝きながら火狼目がけて飛んでいき、すべてが到達した。
 同時に、火狼はまぶしい光に包まれる。
 光が収まると、そこにはかすり傷一つない火狼の姿があった。
「霊弾全部食われてるんだケド」
「く、食ったんですか?」
 橋口さんはうなずく。
「食ったというのはあれね。どっちかというと吸い込んだ、と言った方がいいかしら」
「あのくらいの大きさになれば、霊弾状態の霊を取り込むこともできるわね」
 突然、袖をひかれた俺は、後ろを振り返る。
 そこには、ショートカットで、つややかで真っ赤な唇の女性が立っていた。
 俺は思わず大声を出していた。
「美紅さん!」
「もう無理よ、あいつにはかなわないから、早く逃げて」
「この女、敵よ! さっき火狼と一緒にいた奴」
 橋口さんは至近距離から指を向け、霊弾を撃とうとする。
 俺は慌ててその手を跳ね上げる。
「橋口さん、やめてください。俺の知り合いなんです」
 美紅さんが言う。
「火狼(あいつ)はこの場の霊を吸い込めるだけ吸い込むつもりよ」
「吸い込めるだけって、この霊圧なのよ、全部なんか吸い込めるわけないじゃない……」
 冴島さんが呆れたように言う。
「そうか。そうですよね。じゃあ、おれがヤツの口をあけっぱなしにするから、冴島さんと橋口さんで霊弾をありたけぶち込んでください」
「だから、火狼(あいつ)は霊弾を取り込めるんだケド」
 俺は笑った。
「無限に食えるわけじゃないでしょう?」
「確かにどんどん霊を取り込んで、霊圧が高まれば体が破裂するわね。けど、どうやって口をあけっぱなしにするの?」
 俺は『鉄龍』を掲げた。
「これで」
「?」
「一か八かやってみましょう。行きます! 援護よろしくです」
 そう言って俺は火狼に向かって走った。
「待って、危険よ、待ちなさい!」
 そう叫ぶ冴島さんの声が聞こえる。
「指示が効かない……」
「無駄よ、麗子。さっき何か外れたように見えるケド」
「……」
「火狼! 俺を食らいやがれ」
 ニヤリ、と狼がまるで人のように笑って見えた。
 一瞬で間を詰められ、開いた口が上からかぶされた。
「うわっ!」
 上下に、牙がくると思って構えていたのに、かぶさるように襲い掛かられ、牙が前後になった。
 慌てて地面に倒れ込み、下あごに鉄龍を挿してそこに足をかけると、俺は上あごに両手をついた。
「これで口を閉じれないはずだ」
 火狼は強く下あごを押し上げてくるが『鉄龍』が刺さっていて閉じることが出来ない。
 慌てて、開こうとすると俺が身体を伸ばすから、やはり『鉄龍』は刺さったままだ。
「うわっ!」
 たまらず火狼は頭を振った。俺は火狼の口の中で激しく左右に振られる。
 強く腕と足を突っ張ることで、なんとか振り飛ばされるのを防いだ。