『亜夢? 私、助かったの?』
『気が付いたの? 良かった』
 亜夢は美優を抱きしめると同時に、思念波世界の外を見た。
 人質たちは、手に持ったナイフを手放して、自分の居場所にびっくりしている。
 アキナがバックスクリーンから言った。
「亜夢、あそこで誰か叫んでる」
 見ると、三塁側ベンチにSATの人が出てきて何か叫んでいる。
「(回線を止めた 人質の安全を確認している)」
 やはり何か外部との通信があったのだ、亜夢は現実の美優の頬に口づけした。
 外部の通信で画像を確認し、他人数の|精神制御(マインドコントロール)をしていたのだ。亜夢は考えた。通信がなくなればすべての力を発揮できない。だから、私でも美優を取り戻すことが出来たのだ。
「美優、目を覚まして」
「そこはほおではなくて、ここにすべきじゃないの?」
 美優が唇を指さした。
 亜夢は慌てて弁解する。
「こんなに周囲の目があるから、勘弁して」
 言われてから美優は、周りにいる人質たちに気が付いたようだった。
 亜夢は、非科学的潜在力(ちから)を使って、人質と美優とアキナをグランドに下ろした。
 SATの人の誘導で、人質がグランドの外へと逃げていく。
 亜夢とアキナ、美優は、周りを確かめならが、ゆっくりとグランドを歩いていた。
「私は|精神制御(マインドコントロール)されないと思っていたのに」
「もう少し鍛錬が必要なのかもね」
「また、合宿?」
「いいな。今度は皆で砂浜で遊ぼう」
 亜夢は、美優と奈々の水着姿を思い出していた。
「……うん」
「もうさすがに泳げないわよ。砂浜で遊ぶのは来年ね」
 亜夢は肩を落とした。
 その時、バックネット側から爆音が響いた。
「なに? バイクの音」
「あっ、あそこだ」
 客席の出入り口に、大型バイクの姿があった。
 すると、バイクがスタンドの階段を駆け下りてくる。
 階段の途中で、急に前輪が跳ねたかと思うと、バイクが飛んでネットを超えてきた。
「やばい!」
 コンビニで戦った時は信じられないくらい強かった、と亜夢は思った。アキナと連携が取れれば同等。連携がまずければ一対一の局面を作られて負けてしまう。それと、ここで美優をかばうことになったら、そもそも連携どころではない。
「美優、とにかく下がってて」
「……ん」
 美優はバックスクリーン方向へ走りだした。
「アキナ、一緒にやらないと…… 倒せない」
「わかってる!」
 アキナは右の拳を左手に何度もぶつけていた。
「七瀬美月」
 バイクの女の目元が、軽く引きつったようだ。
「調査結果は正解みたいね」
「名前がわかったらどうだというのだ。知られたところで何も変らない」
 亜夢は一歩前に詰め寄る。
「スタジアムとマスターとの通信は切ったわ。通信が切れたらただのバイク乗りじゃないの?」
「なんのこと?」
「あなたのマスターが|非科学的潜在力(ちから)をアシストできないってこと」
 バイクのスタンドを下ろし、足を大きく外に回しておりる。
「コンビニで負けたのは、私がマスターから力を借りていたからだと思ったの?」
 アキナが前に進み出て言った。