「?」
 美優が、自身の不安を語る。
「えっとさ、浴衣って寝相が悪いと、|開(はだ)けそうじゃない?」
「美優、寝相の問題じゃなくない。旅館に行ったら100%朝|開(はだ)けてるんですけど」
「いや、やっぱりそれはアキナの寝相の問題」
 亜夢は二人の浴衣姿、しかも|開(はだ)けた状態のもの…… を想像して口元が緩んだ。
「亜夢?」
「Tシャツ持ってきてるから貸したげるよ。開けても問題ないでしょ?」
「わたし借りる!」
 アキナはTシャツで対策することに疑問を挟む。
「亜夢、それなら浴衣なくてもよくない?」
「足が寒いよ」
「足は…… そうだな、隣で寝てるんだから、くっつければ」
 アキナの言葉で、亜夢の想像はさらに加速した。
 まずい。ただでさえキャンセラーがないから、私だけ寝れそうにないのに…… と亜夢は思った。Tシャツに下は何もつけず、太ももをすり合わせる、なんてことをしたら、私は、イケないことをしてしまいそうだ。そもそもダブルベッドに三人寝るってだけで興奮気味だったのに。
「亜夢、エレベータ来てるよ?」
 亜夢はエレベータに乗っている美優から声を掛けられる。
「あ、ゴメン、ぼーっとしてた」
 美優が言う。
「やっぱり亜夢がキャンセラーつかいなよ」
「だ、大丈夫だよ、そのせいじゃないから」 
「そお…… 無理しないでね」
「うん」
 夜の街に出て、美優の下着を探した。
 下着のお店も何件かあったが、手持ちのお金では買えそうになかった。
「カードもってればなぁ」
「ハツエの家の近所じゃ、カード使える店なんてないもんね」
 美優が|精神制御(マインドコントロール)されたのは、超能力の合宿の為、にハツエを尋ねていた時だった。そこに行く時は、カードは使えないため、持っていなかったのだ。
「けどこんなのがこの金額なんて、ちょっとびっくり」
「ほら、これなんか真っ赤で、ここんとこスケスケだよ。びっくりしだよ。女子がこんなのはく時ってどんな気持ちなの」
「アキナ、ちょっと黙って」
「値段はびっくりじゃないけどさ……」
 美優は一人で残念そうだった。
 そもそも美優はここいらのハイブランドの店で普通に買い物をしている人だったのだ。それなのに|非科学的潜在力(ちから)がつかえるようになった為に、ヒカジョに移ってきたのだ。
「諦めて食事にしよ。食事」
 アキナと亜夢の意見が通って、分厚いステーキを出す店に入った。
 アキナと亜夢でビーフステーキー500gを分け合って平らげ、美優はチキンを食べた。
 三人は満足して、ホテルに戻った。
 順番にお風呂に入り、美優は最後にお風呂に入り、風呂場で肌着を洗ってフロアにある乾燥機を使った。
 美優は戻ってくるなり、亜夢たちに言った。
「なんか、このヘッドフォンと浴衣は似合わないよね」
「そんなことないよな、亜夢」
「うん、それなりに」
「そお?」
 自らの手で袖を引っ張って腕を伸ばし、くるっと回る。