「あっ、あそこ? 今の時間なら、人通りもすくないから、アイドルとかモデルさんみたいな写真が撮れるよ。アキナも行こうよ」
「私はあんまり興味ないけど、二人が行きたいなら、行く」
「じゃ、決まりね」
 朝食を終えて、部屋に戻ると、持ってきた中で一番好きな服装に着替えて、通りにでた。
 スイーツのお店や、小物を売っているお店、有名な店がいっぱい並んでいる。そしてシャッターが閉まっていて、そのシャッターには全面、おしゃれに落書きがしてある。シャッターが閉まっている店のまえで、ポーズを取りながら、写真に撮ってもらう、ということを順番に繰り返していく。時に二人、三人で撮ったり。
「私、出会ったときからずっと思っていたの。美優はやっぱり精錬されてる。そこらのモデルよりもカッコいい」
 美優は周りを見渡し、口の前に指を立てる。
「亜夢、ここらへん、本当にモデルさんとかモデルになりたい娘(こ)とかが通ることがあるから、うかつにそういうこと言わないで」
「ご、ごめん」
「けど、本当に、すんごい綺麗な女(ひと)が通るね」
 とアキナが言う。
「あっ、ほら、あそこ。あそこって、撮影してるんじゃない?」
「亜夢、見に行ってみる?」
「!」
 アキナは何かを感じたようだった。
「亜夢、私は行かない。あと、キャンセラーいらないから、使っていいよ」
 アキナが赤いキャンセラーをはずすと、亜夢に放り投げた。
 亜夢は受け取って、それを頭につける。
「じゃ、ちょっと見に行ってくる」
 亜夢と美優はある店舗の前で撮影している一団の方へ向かっていった。
 アキナは、深刻な表情をして車通りのある道へと小走りで向かっていく。
「どうしたんだろう?」
「……」
 しばらく亜夢もアキナの後ろ姿を見つめていたが、手招きする美優の方へ走っていった。



 亜夢と美優が撮影風景を楽しんだ後、車通りのある方へ行くと、アキナが膝をついて座っているのに気付いた。
「あれ、アキナじゃない?」
「行ってみよう」
 二人が走って近づくと、アキナは何かを抱きかかえて泣いていた。
「アキナ……」
「どうしたの、アキナ」
「……」
 泣いているばかりで、状況が分からない。
「ミィ」
「?」
 亜夢がアキナの抱えているものをみると、それは子猫だった。
 子猫が必死に何かを探していた。
「どうしたの? その子猫」
「……」
「話さないと分からないよ」
 アキナが道路の真ん中あたりを指さした。
 赤い染みが広がっていた。亜夢は、アキナの思念波(テレパシー)を聞いた。
『親猫が死んでしまったんだ。近くにこの子猫が一匹だけ残されていて』
『もしかして、さっきキャンセラーを外したのは?』
『そう。この子猫の声を聞きたかったから』