俺はそれを止めに跳び出そう、とすると、
「待ちなさい」
 と言われ橋口さんに腕を掴まれる。
「もう間に合わない」
「けど……」
「あなたは他の客を避難させて」
「なんて言って説明すれば」
「そんなこと考えて」
 橋口さんはVIPルームへ近づく。俺はホールの真ん中で言う。
「VIPループで危険物が見つかりました。慌てないで、速やかに店の外に出てください。皆さん、慌てず、店の外へ出てください」
 夜も遅くなっていて、満員という状態ではなかったが、結構な数の客が出入り口に急ぐ。慌てて会計をする店員。
 会計を任せた客はどんどん出ていく。
 VIPの扉を少し開けて、橋口さんは中を覗く。
 客が出て行き静かになったホールで、突然俺のGLPが警告音を鳴らす。
「なんだ?」
 見ると『助逃壁』の表示がフラッシュしている。
 初めて見る表示に、どう対応していいのか慌てる。
 VIPルーム側を見ると、GLPの警告の意味が分かる。『助逃壁』が捉えた霊体が多すぎて、破裂しそうなのだ。
「橋口さん、伏せて!」
「?」
 俺はジェスチャー伝えようと、手を広げて床に伏せるような仕草をしてみせる。
 意味に気が付いて、橋口さんが床に伏せる。
 遅れて俺も伏せる。
 物理的にVIPルームの扉が破壊されて吹き飛ぶ、店内を仕切っているガラスとそのガラスが一斉に割れる。
「うわっ!」
 大きな音が終わって、俺は立ち上がる。橋口さんが伏せたままなのに気付いて、助けに行く。
「橋口さん」
「私は大丈夫よ、連中には逃げられちゃったケド」
「えっ?」
 俺は破壊されたVIPルームの扉から中を見る。チーフが倒れ込んでいる以外に、人影はいない。
「チーフっ!」
 ホールの端で騒いでいる女の子に救急車を呼ぶように言う。
「チーフが倒れてる、救急車を呼んで!」
「私は奴らを追うわ」
「俺も行きます」
 チーフに応急処置をしてから、俺は立ち上がる。
「……あなた、麗子に何か指示されているわね?」  
 俺は自分の体を見た。
「?」
「いいわ。やれる範囲で。ついてきなさい」
 そういうことか、と俺は持った。冴島さんからの指示、確かにあった。『これからさき、この男に近づかないこと』つまり俺はその範囲内でしか動けないということか。
「はい」
 橋口さんが何かを感じ取るように通りを右に左に進み、気配を感じるように視線を配る。
 俺は急に動き出す橋口さんに置いていかれないように後をついていく。
「橋口さん」