子猫は逃げてしまったのだろうか。亜夢はしばらく考えていたが、干渉波が思考を妨げたせいで、それ以上考えることをやめてしまった。
 中谷のキーボードを叩く音が止まって、ピロリンと音がした。
「おっ、帰りのヘリの連絡がきたよ。お待たせ」
 中谷がパソコンを確認していると、また言った。
「もうこんな時間だ。途中で何か食べてく?」
 アキナがいきなり手を上げて言う。
「あっ、それじゃ、途中にあったホームセンター! 絶対そこがいい!」
 亜夢と美優は顔を見合わせた。
 アキナが同意を求めてくる。
「ね、亜夢も美優もいいでしょ? ね、お願い」
「う、うん」
 中谷は別に何でもいいといった感じで、立ち上がると言った。
「じゃ、さっそく出発しようか。ホームセンターのフードコートだと、混むかもしれないしね」
 署の建物を出て、中谷がどんどんと歩いていく。
 さすがにかなり歩いたので、亜夢が尋ねる。
「どこに行くんですか」
「ああ、ごめんね。清川くんが別の仕事が入ったせいで、私有車に乗ってくことになったんだ」
「中谷さんの車?」
「そうだよ。そこの駐車場」
 亜夢は、銀色の車にパステルカラーで絵が描かれた車を見つけた。その絵には見覚えがあった。
 立ち止まって、中谷に確認する。
「中谷さんの車って、あれですか?」
「そう! よくわかったね」
 いや、分かるよ、パソコンに似た感じシールは張ってあるし、PCの壁紙も、スマフォにもそんな絵があったじゃん。亜夢はあれに乗るとどういう風にみられるのかを考えてゾッとした。
「あの、私、痛車には……」
 美優が突然反応した。
「かわいい! 亜夢、かわいいよ、この車の絵。中谷さんのPCと同じ!」
「美優……」
 亜夢の不安げな表情をみてとったのか、中谷が言う。
「大丈夫、この絵の事が分かる人は同類だから、何も怖いことはないよ。この絵を知らない人が何を言おうが、別に気にならないし」
 亜夢はその考えもどうなの、と思った。大体、窓ガラスに絵がかかっていて、車検が通るのだろうか、しかも警察官が運転するのに…… とかそういう部分も気になった。
「とにかく! 早くホームセンター行こう」
 アキナは、なにか焦っているようだった。
 軍の空港へ行く途中の道で、大きなホームセンターに入った。中谷さんが駐車場所を探していると、アキナが言った。
「ちょっと先にいくから、車止めて」
「えっ?」
「いいから止めて」
 アキナは必死な表情で言った。
 中谷さんはホームセンターへの出入り口近くで車を止めて、アキナと亜夢、美優を降ろした。
「絶対フードコートに居てよ。あと非科学的潜在力の対策しているゲートがあるはずだから、絶対引っ掛からないで」
 中谷さんはすごく緊張した表情だった。
「?」
「乱橋くん、二人に説明しておいて」
「はい」