「橋口さん、この結界、どうすればいいですか? 『助逃壁』は効きますか? 『鉄龍』はどうですか?」
 橋口さんは、俺の言葉など聞こえていないようだった。
 軍服をきた長身痩躯の男が迫ってきているのだ。
「こんなに単純な結界に嵌るとはな…… ククッ」
 俺には男の目が光ったように思えた。
「とにかく『助逃壁』行け!」
 俺は竜頭を押し込んだ。
 放たれた光の壁は、橋口さんを押さえつけている結界をスルーして、軍服の男へと飛んでいく。
 男は、ひょい、と石垣に飛び上がると、さらに跳躍して俺の背後に降り立った。
「何度もそんなものを食らうか」
 一瞬で間を詰められ、正面へ突き出した右足が俺に飛んでくる。
 かわせ…… 心の中ではそう叫ぶが、間に合わない。
「うぉっ」
 体重差だろうか、筋力の違いだろうか、俺はカンタンに蹴り飛ばされた。橋口さんのいる結界にぶつかって、今度は地面に叩きつけられる。
「ぐっ……」
 自分の腕が胸と地面の間に挟まって、胸の一点を強打した。
 息が……
 うつ伏せから体をひねって空を見上げると、軍の帽子にこけた頬、軍服の男が視界入った。
「死ね虫けら」
 ブーツが顔に落とされる。
 瞬間に体をひねってかわす。
「避けるか、それなら」
 左足をひねるがわに突き立て、右足でボールをけるように振り込んでくる。
「あっ」
 激痛が顔面に広がる。ほとんどしびれているものの、口へ流れてくるものが感じられる。 
「ほら、逃げてみろよ」
 ガツン、と骨がぶつかる音がする。
 まずい、これをかわさないと、死ぬ……
「もういっちょ」
 大きく振り上げた時、一瞬体を九の字に曲げて、左足の抑えをかわす。
 俺は体をねじり、転がる。距離ができるまで、何回も転がった。
 そこで身体を起こすと、声が聞こえた。
「かげやま…… くん」
 橋口さんが四つん這いになって、俺を呼んでいる。
 涙をぬぐって、しっかりと目を開く。
 橋口さんの紫色のセーターの胸元から、大きな胸が…… 谷間というか、房の揺れが…… 魅力的な光景に、俺は頭がクラッとなった。
「あんッ!」
 橋口さんが、反射的にそう言う。
 俺はいつの間にか、橋口さんの背中に回っていた。
 そして俺の手は、橋口さんの胸の前に当たっていて、地面と胸に挟まれていた。
「ご、ごめんなさい。おれ、触るつもりじゃ……」
「ちょ、頂戴」
 俺の腰も橋口さんの柔らかいお尻のあたりにあたって、気持ち良くなっていた。
「ちょ、ちょうだいって?」
「結界を破る力!」
 と、突然、ぱあっ、と橋口さんの胸のあたりが光った。
 俺はまぶしさに目を閉じた。
「なんですか、この光?」