急に暗くなった、と思って目を開けた。
 目が慣れてくると、状況が分かった。
 俺と橋口さんは結界の外出ていた。
 軍服の男は、顔を覆っていた腕を開いてこっちを見る。
「結界を壊したというのか」
「このこのエロパワーをなめないことね」
「えっ? エロパワー? なんかもっとカッコいい名前着けてくださいよ」
「じゃあ、スケベパワー」
 俺は項垂れた。
「ならば俺の霊弾を食らえ」
 軍服の男は、手袋をした手の人差し指を伸ばし、親指を立てて、銃のような形をつくる。
 そして、狙いをつけると、そこから光る霊弾が発射された。
「かげやまくん、トレンチコート!」
 俺は地面に落としていたトレンチコートに飛びつき、橋口さんに投げた。
 自然と広がったトレンチコートが男の放った霊弾を捉える。
 橋口さんが、トレンチコートのうしろから鉄拳を霊弾に向けて打ち込む。
 すると、霊弾は倍のスピードで男に返っていく。
「ぐはっ……」
「橋口さん、効いてますよ! もう一発」
「屋敷の時のようにここは霊圧高くないんだケド」
 霊を弾丸として打ち出す技だ。周りから取り込む霊力がないと、自分で振り絞るしかない。霊圧が高ければやりやすいということなのだろう。そして、ここは街中、霊圧は高くない。
 橋口さんは俺を手招きする。
「?」
 そして胸を手で持ち上げてみせる。
「ここに手を当てて」
「えっ!」
 俺は引いてしまった。しかし、橋口さんは俺の手を引いて胸に押し当てる。
「ほら、さっきみたいに後ろに回って」
「……」
「早く!」
「はい」
 俺はもうやけになって橋口さんの胸を触った。
 柔らかいし、後ろに回ると橋口さんの髪からほんのりいいにおいがする。
 自然と背中に体を押し付けてしまう。
 橋口さんもさっきの軍服男のように人差し指を伸ばし、親指を照準よろしく立て、狙いをつけた。
「霊力頂戴!」
「はいっ!」
 霊力なのか、精力なのか、頭のなかがぐっちゃぐちゃになってわからなかった。
 けれど橋口さんの大きな胸が光って、俺は目をつぶった。
 ドンっ、と大きな音がして、目を開くと、軍服の男は胸を抑えていた。
 苦しそうに、膝をつく。
「ぐぁ……」
 スッと、男の周囲の空気が歪む。
 何か、帽子、外套、軍服を着た男が抜けていくように思えた。
 男はみるみるうちにおっさんに金を渡す前の体格に戻っていく。
「霊が抜けた?」
「そ。成仏したってこと」
 男は、うつ伏せに倒れ込んだ。
「だ、大丈夫?」