と店長の声がした、と思ったら店長は店の奥へ引っ込んでしまう。
 『やっこさん』の頭のような部分が、ぱっくりと割れた。
「くち?」
 上村さんを食べよう、いや、飲み込もうというのだろうか。
「もう一回!」
 俺はもう一度、手で銃のような形をつくって、霊弾を打つ準備をした。
 さっきも、しっかり撃てているはずだ。狙う場所が間違っているだけだ、と俺は思った。
 で…… どこを狙う?
「ボス」
 上村さんが、そう言った。俺に言ったのか? 上村さんの視線は全く違うところを見ている。
 俺はその視線を追うと、男が一人立っている。
 どうやらそいつが『ボス』らしい。
 真っ赤なジャケットに赤いシャツ。なぜそんな組み合わせなのか分からないが、男はジャケットの内ポケットからウイスキーを入れる金属のボトルを取り出して、一口あおった。
「世話の焼けるやつだ」
 ボスと呼ばれた赤ジャケのお琴は、両手を広げて目をつぶり、胸の前で手を合わせた。
 合わせた手の平をゆっくりと広げると同時に、目を開ける。
 手のひらの間に赤い光が見えた。
「焼き尽くせ」
 言った瞬間、赤い光は生き物のように宙を走り『やっこさん』の腕のぐるっと回った。
 回った腕に火が付き、黒焦げになると、上村さんごと腕が落ちてくる。
 赤ジャケの男は上村さんを抱きとめ、そっと駐車場に下ろした。
「……」
「ヴォォォォーーーー」
 三度目の咆哮。
 それは断末魔の叫びだった。
 赤い光が『やっこさん』の身体のあちこちを走り回り、触れた部分が燃え始めていた。
 あっという間に全身に火が回り、黒く焦げた紙がヒラヒラと舞って、落ちてきていた。
「すげぇ」
 気が付くと、赤ジャケのボスと上村さんの姿は見えなくなっていた。
「……」
 色々なことが一度に起こって整理がつかなかった。
 未熟なうちに式神を扱うと危険なこと。俺にも霊弾は撃てるが、威力が低いこと。上村さんという女性はどうやら、美紅さんと同じ類の者であること。そのボスである赤ジャケの男が赤い光を操れること。
 そのボスに、見逃されて助かったこと……
「ほら」
 声のした方に振り返ると、店長が箒とチリトリを差し出していた。
「駐車場をよごすんじゃないよ。まったく」



 仮眠を取って、コンビニから直接大学へ向かった。
 大学の授業が終わると、スマフォに着信があった。
「もしもし」
『ちょっと仕事が空いたけど、除霊士の勉強する気ある?』
 体は疲れていたが、不思議とやる気はあった。
「はい、よろこんで。いくつか確認したいこととかもありますし……」
『なに、確認したいことって…… なんか嫌な感じがするけど。まあ、いいわ。そこの大学から川原の方に行ったところに野球のグランドあったでしょ? そこに行くから』
「はい」
『野球場は待ち合わせに使うだけよ。千本ノックとかじゃないからね?』
「はい」
『ノリが悪いわね』
「……す、すみません」