北御堂は、カーテンごしに映る人影に自分の頼みごとを話していた。そして用件をすべて話し終えてから、
「ひとつ聞いてもいいかしら?」
 と言った。
 ワザワザ仕切りカーテンがある教室に呼びだし、カーテンの向こう側にプロジェクタを用意して陰をカーテンに写している。
 薫の両サイドにはミキとサキの姉妹が立って見張っていた。
 カーテンごしの人影は、スマフォ?のようなモノを使って、声色を変えて言った。
「どうぞ」
「何故、顔を見せてくれないのかしら」
「…」
「私はすでに書記の佐々木さんから聞いています。あなたは生徒会長さんですよね」
 と、薫は、追い打ちを掛けた。
 そして少し前に出るような仕草をすると、ミキとサキがカーテン側に進み出てきた。
 それだけしても、カーテンの先にいる人物は、そこから出てくることはなかった。そして、
「その質問には答えられません」
 と言い、
「とにかく、まずは上野さんがあなた方がなんとか出来る状態なのか、そうでないのかを見極めてもらいます。それに関してはお手伝い出来ます」
「 京町先輩、 よろしくお願いします」
 実名を出してきたことに動揺したのか、しばらく反応がなかったが、腕を組み直してからその影は言った。
「…ちがいます」
 カーテンの横から、こちら側を映していいるであろうカメラを向いて、薫は言った。
「とにかくお願いします」
 そして深く頭を下げた。
 薫は、真琴に事情を話した。
 上野の奇行の話、頭痛の話、それらは『ある筋から』依頼された、ということ。ある筋とは言ったが、品川さん関連だとは言ったので、運動部の部会かその上の生徒会しかなかった。
 話を聞いて、真琴はほぼ間違いない、という感じの対応だったのが、薫が釘を刺した。
「本当にただのストレスとかによる奇行だったり、脳の病気であった場合、目の前にいる真琴が一番危険に晒されるのよ」
 薫は両手を胸の前で組んで目を閉じた。
「ありがとう。そう言ってくれなかったら、疑いもせずに対応していたよ」
 真琴は薫の両手を包み込むようにして、言葉を続けた。
「いきなり危険なことにならないように身長に行動する。誓うよ」
 薫の表情は少し穏やかになった。
「それだけはお願い」
「竹刀なんかで叩かれたら腫れちゃうよね」
 やっぱり危機感が薄い感じがする、と薫は思った。この危機感のなさは、日本に暮らしているからなのだろうか、と思った。だからそういう強い危機感を求めてもしょうがないことなかも、自分がそこをフォローするしかないのだ、と薫は思った。
「それじゃあ、待ち合わせの場所に行きましょう」
 薫が言うと渡り廊下を歩き始めた。真琴はそれについてあるいた。
「どこなの?」
「体育館ということよ」
「ふーん?」
 こっちの要求通りに、器具類はどけてくれていると良いが、と薫は思った。頭痛になった場合、そのまま横になれる状況が必要と思って提案したものだった。
 だが体育用具がごろごろと転がっているとエントーシアンに支配されつつある上野がそれを使って物理的な攻撃をしないとも限らない。何しろ、剣道部の男子部員を倒したのだから。
「お待ちしておりました」
 体育館の入り口に立っていた 佐々木ミキとサキが言った。
「え? 薫、知り合いなの?」
「新野さんご協力ありがとうございます」
 確かこの双子は生徒会の書記だ、と真琴は思った。品川さんの話が広まったルートは生徒会ということか。
 体育館は、放課後の部活動で半面をバスケットボール部が、もう半面をバドミントンが使用していた。
 部外者の薫と真琴、生徒会の双子は邪魔にならないように端を通った。
 基本的に部活動をしているから、特別視線を集めることはなかったが、それでも何か異様に見えるらしく、薫や真琴の方を振り返る者がいた。
 そして体育用具室の扉にくると、薫は言った。
「何? この張り紙」
 双子の佐々木は何を尋ねられているか意味が判らなかったらしい。
「どういうこと?」
「秘密の活動の為、関係者以外18:00まで立ち入り禁止、と書いております」
「秘密の活動? ここに書いてあるのに?」
「確かに変だね。秘密、って誰にでも読めるところに書くものじゃないよ」
 真琴も薫の意見に賛成した。
「当然、私が外に立っておりますので、関係者以外はいれさせません」
 薫は少しめまいを感じた。
 アホの生徒会だ。カーテンごしにこだわる生徒会長は筆頭に、この学校の生徒会はアホばかりだ…
「じゃあ、この張り紙はいらないわ」
 薫はビリっと破って、貼られていた紙をサキに渡した。
「上野さんはこれから来るんでしょ?」
「書記のあなたが突っ立っている上に、あんな張り紙を見たら入ってくると思えない」
「そうだね。ボクもそう思う」
 佐々木サキが体育用具室のドアを開け、佐々木ミキが入った。ミキが、
「どうぞ」
 と言うと、薫と真琴も順に中に入った。
 そこには周りにマット、中央にエバーマットがしかれていた。その様子は、まるでプロレスかボクシングのリングのようだ。
「どこまで悪趣味なのかしら…」
 薫は目を閉じて頭に手を当てた。