生徒会長は腕を組んで、部屋の影にたっていた。薫と佐々木は、上野と真琴が重なりあっている状況を解き明かそうと、上野の脱いだ上着を取り、エバーマットが沈んでいて見づらいところを手でさぐったりしながら、確認を始めた。
 二人が動かいのだから、接触した状態であることは間違いない。ただ、この態勢だと真琴が苦しい。夢、であるなら肉体の影響があるはずだ、と薫は考えた。
「接触状況に問題がないなら、このまま上下逆にしてしまうといいんだけど」
 薫は、佐々木に言っても判らないだろう、と思いながらも、声に出して言った。
「きっと体にかかるストレスは夢に影響をしているはずよ」
 佐々木はうなずき、
「新野さんの手が上野さんの足に潰されるようにして接触しています。ここを抑えながらひっくり返せれれば…」
 薫も、上野のスカートを大胆にめくって確認し、
「そうね。この態勢からなら行けるかも」
 と言った。
「二人の頭の方を頼みます。私は真琴の手が離れないようにしながら回転を補助します」
 身長が高い佐々木は、自分の方が力がある、と思われたことが悔しかったが、上野さんの為にもやるしかなかった。
 佐々木は上野の脇の下から手をいれて引っ張る態勢を取って、
「じゃ、セーノでいきます!」
 と呼びかけた。薫はうなずいた。
「セーノ!」
 二人は力を合わせてうつ伏せだった上野の仰向けに、下敷きになっていた真琴を上野の上にうつ伏せに入れ替えた。
「ふーふー」
 佐々木は、力を出し尽くしたかのように足を放りだして座った。
 上野の伸ばした足の間に、真琴が入って足を抱え込んでいるような態勢だった。
 薫は、真琴の手がまだ上野の足に触れていることを確認した。しかし、真琴の頭が上野の体からずり落ちそうになっているので、真琴の脇に手を入れて真琴を持ち上げた。上野の腹の方へ頭を載せようと、ずりあげようとしたのだ。
 その時、薫にある考えがよぎった。
 ちょっと間違えば真琴の胸が触れる。
 手がすべった、とか言えば問題ない。この状況なら、言う必要もない。言った方が不自然かも。そんな感じで触ってしまおうか、と考え出してしまい、何も出来なくなった。
「手伝いますよ、北御堂さん」
 見かねた佐々木が立ち上がって近づいてきた。
 手を広げて制止し、
「大丈夫だから」
 そう言って、ぐいっと真琴の体を上にずらした。
 手を抜くときに、少し胸の方向にずれただけに終わった。薫は自分の優柔不断さを悔やんだ。
「あ、めくれちゃいましたね」
 佐々木が何かに気がついたように言った。薫がみてみると、真琴の頭が上野のブラウスをめくり上げており、お腹に顔をつけているような状態だった。
 薫は真琴の顔が見える側に周り、じっくりと観察してから、
「あ、あ、あ、そうね、で、でもこのままにしておきましょう。接触が増えている分には問題ないし」
 薫は、上野のお腹を自分のお腹とみなし、真琴の表情など、その様子を目に焼き付けていた。