薫が見つめていると、真琴がゆっくりと目を開けた。
 これが、勝ったのか、負けたのかは本人の精神に触れない限りわからない。
「どう? どう…… だったの?」
 薫は尋ねた。真琴は反応がなかったが、瞳が焦点を取り戻したように動き出した。
 が、体は動いているのだが、いっこうに立ち上がる気配がない。
「薫! ボク、挟まってない?」
「え?」
 見ると、上野の足には力が入ったような筋肉の盛り上がりがあった。
「マズイ! 失敗した!?」
 上野の顔を見た。
「まだ目を閉じてる?」
「大丈夫だよ。冗談冗談!」
 上野が話し始めた。
「助かったすぐぐらいから、意識戻ってたんだ。でも、まさか、私達がこんな態勢だったとは理解するのに時間が掛かったけど」
 上野は寝転がったまま、そう言った。
「それより脚の力緩めてよ…」
「どうしようかな〜」
「立てないよ〜」
 上野が足の力を弱めた。
 気がついた真琴は立ち上がると、上野に手を貸した。
「良かった。助けられて」
 上野も手を借りて立ち上がると、
「本当にこれで頭痛とさよなら出来るのかな…」
「アイツが原因の頭痛はなくなる。ボクが保証するよ」
 掴んでいた手でそのまま握手すると、
「ありがとう」
 と言った。
 佐々木と薫が拍手した。
「新野さんと北御堂さんの協力により事件解決ということで… 本当にありがとうございました」
「正直途中までずっと苦しかったよ」
 真琴が言った。
「見た感じもそんな感じだったわ。上野さんに覆いかぶされていて、苦しそうだったもの」
「え? じゃあ、ずっとあの格好で寝てたんじゃないの?」
「うん。私とミキで上野さんと真琴の姿勢を変えたけど…」
 真琴は、目が覚めた時の状態と夢の中でやっていたことに関連性を感じた。もしかしたら本当に精神だけで戦っているのではないのかもしれない、と。
「新野さんだっけ。スマフォ持ってる?」
 上野は何やら三次元バーコードを表示させて待っている。
「持っているけど」
「これ」
「何?」
「知らない? 使ったことない?」
 薫が横から出てきて真琴のポケットに手を突っ込んでまさぐった。
「ヤ! 何すんの?」
「『リンク』のID交換よ、早くスマフォだして。やってあげるから」
 と言って、真琴のスマフォを取り出して上野のIDを登録してしまった。
「私も良い?」
「いいよ」
 薫も上野のIDを登録した。
「陽子さんなのね」
「真琴に薫ね」
「よろしく!」
 三人は互いに互いの顔を見合い、微笑んだ。狭くて暗い用具室が、少し明るく楽しげに感じられた。