私は右手の指で唇に触れながら、小さい声で返事した。
なんていうことを口にしているのか。けど、マミの方だっておかしい。『前を洗って』に応えてくるとは思いもしなかった。
するとマミは必要以上に体を寄せてくる。そして、耳元でささやいた。
「気持ち良くなっちゃったの?」
自分がマミに言うならいいが、自分がマミに言われていると思うと、めちゃくちゃ恥しい。
なんだろう、自分が主導権を取るはずだったのに。
そう思いつつ、小さくうなずいた。
マミの口元が少しニヤついた。
「じゃあ、もうすこし洗ってあげるね」
マミはボディタオルを首にかけ、両手で私の膝をそっと広げると、マミの手がすーっと撫でながらあそこへ近付いてきた。
次にされることを考えると、それだけで声が出てしまった。
「!」
誰か脱衣所に入ってきた。
「マ、マミ!」
「しっ。誰か来たのかな? お風呂を片付けにくるには早すぎるし」
「まだ入ってたのね〜 時間が終ったらまた来ます」
「寮母さんの声ね」
「いっちゃったみたいね」
「いっちゃったの?」
「ち、違うよ」
なんだろう。マミって、こんなにいやらしいかっただろうか。
何か違和感がある。
「あ、あのさ。もう洗ってもらわなくていいよ」
「あれ? いいの?」
いや、もっとして欲しい。こんな中途半端で止められたら、寝れなくなってしまう。けど。
「うん。なんかおかしいでしょ。お風呂でこんなことして」
「そうかなぁ。お風呂だから汚れてもすぐ洗いながせるし、いいんじゃないかなぁ」
いや、絶対におかしい。これがマミである訳がない。
私は立ち上がった。
「あなた誰?」
「木更津麻実(きさらづまみ)だけど」
何か間違い探しを強要されいてるように気分になってきた。自分で自分のことを苗字からいうかしら、いや言うこともあるか。何かこのお風呂場で場違いなことは……
「!」
わかった。
こいつはマミじゃない。こんなに簡単に、こっちのして欲しいことをしてくれる理由(わけ)がない。
「やっぱり、あんたはマミじゃない」
「何いっているのよ公子」
マミも立ち上がった。
「証拠はカチューシャよ」
「お風呂だって髪を上げとくために使う人いるよ」
あれ、そうか、そう言われれば。
しかし、ここで引くわけにはいかない。
「じゃあ、とって見せてよ!」
「……」
マミは頭に手をかけ、カチューシャを取るしぐさをして止めた。
「もっと強くなれ」
「えっ!?」
するとマミはカチューシャを外し、床に叩きつけた。
一瞬の後、ゆらり、と体がゆれる。
「危ない!」
マミが床に倒れ込む前に、体を支えることができた。
マミは操られていた、ということなのか。
このカチューシャで?
誰がそんなことを?
鬼塚刑事?
「お、重い……」
いくら女子とはいえ、自分より大きい女の子のからだを支え続けることは出来なかった。
ゆっくりと床に下ろす。
「マミ、マミ、起きて」
頭を腿の上にのせ、肩をゆすった。
息はしている。
まるで寝ているような感じだった。
「マミ、しっかりして!」
自分の声が響いて何を言っているかわからなかくなる。
誰か呼んできた方がいいかしら。
「マミ」
肩を揺する度に、揺れる胸。