中谷が扉を閉めると、三人は急いでヘリから離れた。
三人は小さくなっていくヘリに手を振っていた。
翌朝、アキナは寮監に呼び出された。
学校で美優と亜夢がしつこくたずねると、やっとアキナが口を開いた。
「子猫、つれてきちゃったの」
「え~」
亜夢はアキナのホームセンターでの行動からこんな事じゃないか思っていた。
やっぱりホームセンターに寄りたがったのは、子猫の為だったのだ。
「けど、個人で飼ったら両側に違反するからダメだって。だから寮監のところで飼ってもらうことになった……」
「そっか。けど、離れ離れにならなくてよかったね」
「うん」
アキナは笑った。
学校につくと、クラスの中で人だかりができていた。
亜夢が一人の肩を叩いてたずねる。
「新しい転校生だって」
「へぇ」
亜夢がそう言うと、さっと人が捌けて亜夢と転校生の目があった。
「!」
転校生はイスラムの女性のようで、黒い布を頭からかぶり、目だけが見えていた。
亜夢はイヤな予感がした。
テロに加担していた宮下加奈、三崎京子が『マスター』と呼んでいた目だけを見せている人物…… もしかして……
「……ニカーブっていうらしいよ」
「えっ?」
亜夢は何を言われたか分からなかった。
「あの頭から被っている布のこと。イスラムの女性は外に出るときはあんな恰好なんだって」
突然、その転校生と目があった。
『よろしく』
思念波(テレパシー)でそう言われた。亜夢が思念波世界を覗くと、やはりそのニカーブを付けた姿が現れた。
『……』
返事をしないでいると、思念波世界からはじき出された。
転校生は亜夢を、じっと見つめていた。
この娘(こ)がマスターだとしたら……
亜夢も転校生をいつまでも見つめ返していた。
終わり
終わり